【獣医師監修】犬の皮膚糸状菌症の原因や検査、治療や薬について

この記事では犬の皮膚糸状菌症について解説しています。

犬の皮膚糸状菌症とは

*皮膚糸状菌症の犬の一例

犬の皮膚糸状菌症とは、糸状菌(Microsporum 属, Trichophyton 属,Epidermophyton 属)と呼ばれるカビの一種が、皮膚に感染、もしくは被毛に腐生(被毛に取り付いて皮膚には侵入していない)することで、皮膚に「脱毛、紅斑、その他にも丘疹、水疱、膿疱、痂皮、落屑(フケ) などが見られる皮膚病です。

既に糸状菌を保有している犬と接触することで感染してしまいます。また、土壌、人家、飼育小屋などが糸状菌に汚染されている場合は、そこから犬に感染する場合もあります。

*本症の原因となる皮膚糸状菌

皮膚糸状菌が傷口(掻傷など)から侵入する場合と、被毛や表皮で増殖し、やがて毛孔や表皮内へ侵入することで本症は発症します。

皮膚糸状菌症は、子犬や多頭飼育環境で多く見られますが、基礎疾患や薬剤によって免疫抑制状態になった犬での発生も見られます。

犬の皮膚糸状菌症の検査

症状より皮膚糸状菌症が疑われる場合、以下の検査を行います。

①ウッド灯検査

M. canisが感染している場合、ウッド灯(約360 nm の波長の紫外線)を患部に当てると緑色蛍光を発することがあります。ただし、M. canisの中にも発行しない株もあり、また環境中には蛍光を発する化学物質も多いため、ウッド灯検査だけでは確定診断することは出来ません。

②直接鏡検

病変部から被毛・落屑 を採取し、スライドガラスに乗せ、水酸化カリウム溶液(KOH)でプレパラート封入します。10分ほど時間が経ってから顕微鏡で検査します。

菌糸や分節分生子が観察されることがありますが、検出率は高くありません。そのため、それらが観察されないからといって、皮膚糸状菌症が否定できるわけではないことに注意が必要です。

③真菌培養検査

病変部位の被毛や落屑を、Dermatophyte Test Medium(DTM) 培地上に接種し、24 ~ 27°C(室温でも培養可) の条件下で培養します。通称「ダーマ検査」と呼ばれます。

しかし、この培養検査では感染している皮膚糸状菌だけではなく、発症せずに被毛に腐生している皮膚糸状菌も培養されます。感染源となるかどうかの判定にはなりますが、培養検査によって発育がみられただけで、本症を確定診断することは出来ません。

そのため、培養検査は、直接鏡検で菌体を認めた場合や、ウッド灯検査陽性の場合に本当に糸状菌であったのかの確認と、原因菌の同定のために行うものと考えるのが良いでしょう。

培養された培地上の集落を掻き取り、ラクトフェノールコットンブルー液に浸して顕微鏡下で観察することで、菌種を同定することが可能です。

犬の皮膚糸状菌症の治療

①内服による治療

第一選択薬はイトラコナゾール

表在性皮膚糸状菌症の第一選択薬として、アゾール系抗真菌剤のイトラコナゾールがあります(イトラコナゾールは脂溶性のため、ケラチンに蓄積し、皮膚表面に浸透しやすい)。ただし、真皮以下の深部まで感染が波及した場合は、本剤の効果が十分に認められない場合があります。

また、本薬は犬猫で、消化管毒性や肝障害などの副作用が出る場合があるため、使用には注意が必要です。

テルビナフィン

アリルアミン系抗真菌剤のテルビナフィンも腸管から吸収されたのち、爪や表皮に蓄積しやすく、皮膚糸状菌の治療に有効です。また、テルビナフィンは抗真菌剤の中でも比較的安全性が高いと考えられているため、使用しやすいのも特徴です。

②外用薬による治療

被毛に覆われている犬や猫の場合、外用薬の塗布は浸透しにくく、十分な効果をもたらす可能性は低いです。

しかし、肝疾患や幼若動物など、抗真菌剤の内服が難しい場合は外用薬の塗布による治療を考慮する必要があります。その場合は治療効果を高めるために、薬用シャンプーとの併用がよいでしょう。

ミコナゾール含有シャンプー

皮膚糸状菌症に有効な薬用シャンプーは、真菌に有効な「ミコナゾール含有」のシャンプーが有効です。

まとめ

皮膚糸状菌症は、たとえ無治療でも最終的には自然治癒するとされています。しかし、その間は環境中を汚染することになるので適切な治療が必要です。

*皮膚糸状菌に汚染された環境の清浄化に対し、100%有効とされる消毒薬は「1%ホルマリン」または 「5.25%の塩素系漂白剤」が報告されています。クロルヘキシジンや70%エタノールなどは、皮膚糸状菌の分節分生子を充分殺滅しないそうです。

また、本症を発症した犬に、基礎疾患や免疫抑制状態にある場合は治癒しにくく、時には真皮にまで感染が広がり、難治性の肉芽腫性炎になることもあります。加えて、完全に治癒する前に治療を中断すると被毛に不顕性感染し、それが長期にわたって感染源となってしまう場合もあります。

そのため、本症は、根気強く完全に治癒するまで治療を継続することが最も大切です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする