【獣医師監修】犬の甲状腺機能低下症の症状や治療、薬について

この記事では、犬の甲状腺機能低下症の症状や検査法、治療法、薬について解説しています。

犬の甲状腺機能低下症とは

中年齢以降の犬に多く見られる内分泌系疾患(ホルモンの病気)に甲状腺機能低下症があります。

なんらかの原因により甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌量が低下することで、脱毛や元気消失などの症状が現れます。

一般に7歳以降の犬で発症することが多く、好発犬種はありますが、オスメスの性差はありません。

犬の甲状腺機能低下症の症状

*甲状腺機能低下症の犬。特徴的な脱毛症が見られる。

皮膚や被毛の症状が顕著

甲状腺ホルモンの不足により現れる症状は、年齢や犬種により多少異なりますが、皮膚や被毛の変化は、甲状腺機能低下症の犬で最も顕著に見られる症状です。

甲状腺ホルモンの不足により、被毛は粗剛(ゴワゴワとする)になって乾き、脱毛しやすくなります。こうして被毛全体が薄くなったり、激しい脱毛が見られたり、尾だけが脱毛する場合もあります。

多いのは両側対称性で痒みを伴わない脱毛であり、頭部は脱毛しないのが特徴です。

また二次的に、脂漏症や膿皮症を発症する場合も多く見られます。これは甲状腺ホルモンが不足すると、液性免疫反応が低下するためです。

また重症例になると、ムコ多糖類が真皮に蓄積され水分と結合するために皮膚の肥厚が見られます。この状態を粘液水腫といい、犬の額や顔面の皮膚が厚くなり、側頭部が丸くなって、顔の皺が腫脹し、上眼瞼が下垂して、眠たそうな表情になります。

活動性の低下

また、甲状腺機能低下症の犬の共通した症状は、犬の活動性の低下です。運動や散歩を嫌がるようになったり、精神反応が鈍くなるため、元気が消失したように見えます。

くわえて、甲状腺ホルモンの不足により細胞の代謝自体が低下するため、食事量を変えていないにもかかわらず、体重は増加傾向を示します。

神経症状が出る場合も

甲状腺機能低下症では、発作や運動失調、旋回運動、固有位置感覚や姿勢反応の消失などの症状が見られる場合があります。前庭障害による捻転斜頸や眼振、顔面麻痺を伴うこともあります。

これら中枢神経系に由来する症状は、神経周膜や神経内膜へのムコ多糖類の沈着、大脳の動脈硬化、一過性脳虚血や脳梗塞、重度な高脂血症に続発して発現します。

他にも顔面神経麻痺、虚弱、爪の背側の磨耗を伴うナックリング、跛行などの末梢神経症状が出ることもあります。

甲状腺機能低下症の検査

血液検査により甲状腺ホルモン濃度の測定

甲状腺機能低下症の疑いがある場合は、血清中の甲状腺ホルモンの濃度を測定します。血清中のT4とfT4(遊離サイロキシン)、加えてTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定します。

*甲状腺ホルモンにはT3(トリヨードサイロニン)とT4(総サイロキシン)の二種類がありますが、血液中では蛋白質と結合しホルモンとしては作用しません。

また、一般血液検査項目として、甲状腺機能低下症の犬では「高コレステロール血症」と「高トリグリセリド血症」が認められます。

甲状腺機能低下症の治療

第一選択薬はチラージン

甲状腺機能低下症の第一選択薬は、合成甲状腺ホルモンの「チラージン」です。

1日1回の投与で、初期投与量は0.02mg/kg、最大投与量は0.8mg/kgまでの範囲で投与します。薬の代謝には個体差があるため、効果の発現を見ながら調節していきます。

基本的に、治療効果の判断は投与開始から4週間後に行います。

活動性の回復は通常投与後1週間程度でみられますが、被毛の再生が始まるのは1ヶ月ほどかかります。また治療初期は、発毛休止期の毛が大量に抜けるため、症状が悪化したように見える点に注意が必要です。

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